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丑三つ刻



 だれもいない真夜中にイビキが聞こえる。
 自分のものではない。なのに、どこからともなく、イビキが聞こえる。
 上の部屋からだろうかと、わたしは耳をすます。
 そうではない。もっと近いところだ。
 わたしは足を忍ばせ、音のするほうに、おそるおそる近づいた。
 いた。
 猫が、
 自分のベッドで気持ちよく眠っている。イビキをかいて、大の字になって。
 猫はうるさそうに片目をわずかにあけ、わたしを見るとなんだという顔をして前足で両目をこすり、寝返りを打った。
 おまえはぁ、
 わたしは腹立たしげに猫を揺り起こし、自分のベッドに戻った。
 ずっと人間といると、猫も人間だと思うのかもしれない。大の字で眠るようになり、人間そっくりなイビキをかく。
 最近では、ワープロ原稿に、意味不明の言語を加筆してくれる。いつかは代筆ができるようになるかもしれない。
 ふっ、先が楽しみだ。




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